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第21回全国夕陽サミットin和歌山県南紀白浜温泉

聖地が紡ぐ蘇りの夕陽

第21回全国夕陽サミットin聖地リゾート和歌山・南紀白浜温泉が2024年9月23日(秋分の日=夕陽の日)にSHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMORE(以下文中はホテルシーモア)で開かれました。世界遺産「紀伊山地の霊場参詣道」が24年に登録20周年を迎えたことに合わせ、古来、熊野三山への熊野詣が盛んであったことにちなんで、開催テーマは「聖地が紡ぐ蘇りの夕陽」。講演やパネルディスカッションを通じて、聖地に近接する温泉で人と人とのつながりを紡ぐ南紀白浜の夕陽の価値を再認識しました。

夕陽サミットin和歌山県南紀白浜温泉
SHIRAHAMA KEY TERRACE HOTEL SEAMOREのみかんテラスから望む夕景

開会式典と記念講演 夕陽が生む雇用と経済

サミットの冒頭、夕陽と語らいの宿ネットワークの岸本一郎会長が「私たちの会は、夕陽ではなく夕陽を見て語らう人を主役としています。夕陽は見る場所、見る人によってまったく違うものです。今日はどんな気持ちで夕陽を見るのだろうか楽しみです」とあいさつしました。

開催地を代表して白浜町の大江康弘町長は「明日への希望を与えてくれる存在が夕陽です。今年8月8日に南海トラフ地震臨時情報が発表され、白良浜海水浴場を閉鎖し全国から注目されました。旅館ホテルだけでなく空港も抱える観光立町としてどうするか、サミットを通じて白浜町に対して皆さんの思いをいただけたら」と話しました。

記念講演は、南紀白浜エアポートの岡田信一郎社長が「熊野白浜リゾート空港が考える地域活性化」をテーマに、民営化空港として積極的な事業を展開する自社の取り組みや、白浜の夕陽の価値について話しました。

岡田さんは、白浜町が年間340万人も訪れる和歌山随一の観光地でありながら人口減少が進んでいること、地域所得が低いこと、東京と直結する空港がありながら観光入込客の7割が関西で夏期に偏重していることが課題だと指摘。「それらを解消することが私たちの役割です」。

その一環で、空港の名称に「熊野」を冠したのは「熊野の名前は、東京でもインバウンドにも知られているからです」。熊野と紀伊半島が世界的な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」で訪れるべき世界ベスト5に選ばれたことも背景にあるそうです。岡田さんは「旅行のプロがなぜ熊野を選んだのか。それは、熊野には手つかずの自然が残り、1千年間守られてきた人工物ではないスピリチュアルなものこそが価値を生んでいるからです」。「お付き合いのある世界各国の人たちに熊野を歩いてもらいますが非常に評価が高いわけです」と言います。

白浜町の強みは「空港があり、東京からすぐ来られる。伊豆や軽井沢などよりも時間的に圧倒的に近い。逆に言えば、和歌山市より羽田の方が近いわけです。我々は、関西の奥座敷から日本の白浜、世界のKiiをビジョンに掲げて取り組んでいます」。

その上で地域活性化の方針として①紀南全体を対象に滞在を長期化し地域にお金を落としてもらう②首都圏や東北、欧米豪、東京のビジネスパーソンなど新たな顧客層の取り込み③夏だけ休日だけという曜日や季節偏差を解消しオフピークの底上げする3点を掲げているとしました。特に岡田さんは「オフピークの解消は、旅館ホテルの雇用につながり、所得の底上げにもなる」。

さらに、電動アシスト自転車を貸し出し観光客の動態データを集積したり、ベテラン職員ではなく町内の子育てママに滑走路をドラレコで点検してもらう試みといった空港DX化を進めるなど、空港民営化後に利用者数が10万人増えたそうです。

そして「夕陽は素晴らしい観光資源です。関西で水平線越しに夕陽が見られるのは琵琶湖の東岸と淡路島の西海岸、そして白浜しかない。飲食店は昼と夜しか需要がないですが、夕陽を売り物にすると夕方にも需要を生むことができます」。加えて「白浜空港は日射量が日本一の空港です。しかも冬に晴れることが多く、温泉との相性もいい。夕陽によってオールシーズンの観光地になる可能性が大きいのです」などと話していました。

夕陽サミットin和歌山県南紀白浜温泉
白浜町をはじめ紀南地域の活性化への
取り組みについて話す岡田さんの記念講演

パネルディスカッション 唯一無二の夕陽を伝えるために

「よみがえりの聖地・熊野と南紀白浜温泉と夕陽」をテーマにしたパネルディスカッションでは各氏が夕陽についての思いを話しました。

白浜温泉観光協会会長(当時)の藤田正夫さんは「熊野詣に来た皇族が白浜で夕陽を見てどれだけ感動したか。そういう歴史的な意味も含めて夕陽を観光資源として売り出したい」とし、ノーベル文学賞のカズオ・イシグロの父親が白浜の夕陽を絶賛したことも紹介しました。

ワーケーションを推進しているYeeY代表の島田由香さんは「昨年12月に初めて白浜に来て、夕陽にすごく感動したんです。なんで人は夕陽を見たくなるのだろうと考えると、自分がいい状態にいられるウェルビーイングにとって、夕陽は自分に寄り添ってくれて時空を超えるスピリチュアリティな存在だからだと思います。だから夕陽の写真は大事な人に送りたくなるんでしょうね」。

白浜椿温泉・しらさぎ荘女将の熊野幸代さんは「東京に進学した娘から『ママ、東京では夕陽が見られない』とLINEが届きました。彼女も白浜の当たり前の価値に気がついたんですね。住む私たちがもっと良さを発信していかなければならないと思っています。自然のエネルギーを感じられる存在が夕陽です」。

夕陽評論家の油井昌由樹さんは「白浜の夕陽はグリーンフラッシャーが見られるが見られる可能性があります」とする一方、和歌山の夕陽は多様なシルエットを生むことを紹介しました。

第21回サミット宣言をホテルシーモアの川田純子さんが読み上げ、全会一致で採択しました。

最後に、次回開催地の青森県鰺ヶ沢温泉・ホテルグランメール山海荘の杉澤廉晴社長によるビデオメッセージと、青森県でタウン誌「ふぃ~ら~」を発行しているフィーラー倶楽部の工藤正昭社長がサミットへの来場をアピールしました。

夕陽サミットin和歌山県南紀白浜温泉
パネリストの皆さん

夕陽談義と夕陽観賞会

サミット後、ホテルシーモアのみかんテラスで夕陽観賞会を実施し、熊野本宮大社の九鬼家隆宮司による夕陽談義も行いました。

夕陽観賞会では、雲が多かったものの、夕陽が太平洋の水平線に近づくにつれて紅色が増していき、参加者全員で夕陽を見送りました。

夕陽談義で九鬼宮司は、自然と文化が調和し神仏習合の場所としての熊野についてお話しくださいました。その中で、熊野本宮大社、熊野那智大社、熊野速玉大社の熊野三山について「速玉大社は前世の罪を浄め、那智大社は現世、今の時代の縁を結び、そして本宮が未来に向かって自分の方向性を決めるというそれぞれの役割があります。過去にいいことがあったとしても、それは思い出であり記憶だけです。その上で現状を確認して未来へと紡いでいく。だからこそ、熊野は蘇り、再生の地と言われるのです」。

「今年は世界遺産20周年であり、熊野古道とスペインのサンティアゴ巡礼道が提携して10周年になります」「最終的には自分がどうするかですが、自然の中で自己探求する場所が熊野のであると知っていただければと思います」とし、最近は若い世代が自分探しをする場として熊野を訪れることが増えているそうです。

夕陽サミットin和歌山県南紀白浜温泉
太平洋の水平線に沈む夕陽を見送った観賞会